早稲田大学大学院 理工学研究科 生命理工学専攻

研究成果

■ PBL603
 『質量分析を用いた生理活性物質の定量法確立』

■ 研究グループ
  研究室 氏名 プロジェクトにおける役割
L 加藤研究室 上原 信明 生理活性物質の精製
CL 清水研究室 小林 祥一朗 標識アミノ酸の合成
3 加藤研究室 村上 聡 質量分析による解析
4 加藤研究室 目黒 瑞枝 生理活性物資の発現
5 清水研究室 栗下 晴人 標識アミノ酸の合成
6 清水研究室 重森 雄介 標識アミノ酸の合成
7 清水研究室 清水 勇佑 標識アミノ酸の合成

■ 共同研究プロジェクトの目的(共同研究によって達成しようとしたこと)

ヒトゲノムの塩基配列の解読が終わり、研究の方向はそのゲノム情報を用いた遺伝子機能の解析 (タンパク質の同定、発現解析、機能解析)に移行している。遺伝子機能の解析では、動物細胞や 大腸菌に遺伝子導入をして、実際にタンパク質を発現させる必要がある。このとき、その定量性が 重要になる場合、現在は免疫学的に測定する方法が主である。しかし発現させるタンパク質 (生理活性物質)の抗体が存在しない場合、まず抗体を作製する必要があり、かなりの時間を要する という問題点がある。この問題を解決するために、本プロジェクトでは、その検出感度や解析速度、 特異性、一般性から、未知タンパク質の同定や翻訳後修飾解析などに中心的な役割を果たしている 質量分析に着目した。質量分析の特性を活かしたタンパク質の新規定量法を確立し、定量の大幅な 時間短縮を達成することを本研究の目的とする。

本プロジェクトを実現するにあたり、質量分析の特性から、動物細胞で発現させる生理活性物質の 分子量を標識する必要がある。そこで、動物細胞株を用いた生理活性物質発現系を有する加藤研究室と、 13C標識のアミノ酸を合成する技術を有する清水研究室が共同することによりこの問題を解決した。

細胞培養において、安定同位体13Cの標識アミノ酸を含んだ培地を使い、発現タンパク質を13C標識 する。そして培地での内部標準による13C標識を質量分析で検出できれば、相対的な定量が可能になると 考えられる。これを新規定量法として確立できれば、従来用いられている酵素免疫測定法(ELISA法)と 比較して、発現タンパク質の定量法として時間短縮が達成できる。また、同時に新しい定量系として、 従来出来なかった定量を達成できる可能性がある。


■ プロジェクト研究の経過と成果(共同研究によって達成されたこと)
13C標識を行うアミノ酸としてバリンを選択した。理由としては、動物細胞で生理活性物質を 発現させるため、細胞自身が生合成できず、外部から栄養として取りこまなければならない必須 アミノ酸だからである。以下に各研究室で達成したことを示す。

【清水研究室】
13C2 -グリシンから13C2 -バリンへの合成プロセス(図1)
  1. 13C2-グリシンをメタノール溶媒中で塩化チオニルと反応させて、13C2-グリシンのメチル エステル体を合成し、続けてアミン部位をBoc2OにてBoc保護をかける(化合物1)。
  2. 化合物1を光照射条件下にてNBS試薬と反応させて、得られたブロモ体を亜リン酸トリメチルとreflux下で反応させる(化合物2)。
  3. 化合物2とアセトンを反応させて、白金触媒と水素で還元し、その後アミンの脱保護、エステルの加水分解を行い、13C2-バリンを得る。

【加藤研究室】
細胞の培養
遺伝子導入を行い、動物細胞(加藤研で系が構築されているCOS-1、HEK293など)で生理活性物質を 発現させる場合、発現量がわずかであるため、分離精製に困難が予想される。そこで、まずは細胞 自身が産生する生理活性物質を使い、新規定量法のモデル作りをすることにした。対象の細胞として、 理化学研究所よりヒト肝臓癌由来であるHep G2(図2)という細胞を購入し、CO2インキュベーターで 培養した。この細胞は、 フェトプロテイン、アルブミン、その他多くの肝特異的蛋白質を産生する ことが知られている。本研究では、アルブミンに着目することにした。
逆相クロマトグラフィーにおけるアルブミンの挙動確認
Hep G2が産生したアルブミンを質量分析で検出するには、細胞の培養上清から分離精製が必要である。 そこで、まずは、アルブミンのみを逆相クロマトグラフィーにかけ、そのクロマトグラム(図3)を 得た。この結果をもとに、Hep G2の培養上清からアルブミンを精製するときの判断基準とする。 クロマト条件については、ビジュアル概要の欄に示す(図4)。

■ 研究成果のビジュアル概要
清水研究室
加藤研究室

■ 今後の課題

現段階では、標識アミノ酸(13C2-バリン)を合成し、アルブミンを自己産生する細胞(Hep G2)を 準備した段階である。したがって、まずは質量分析による新規定量法のモデルを構築する。平行して 従来の定量法であるELISA法を用いてアルブミンの定量を行い、新規法と比較・検討する。モデルが 構築できたならば、動物細胞(COS-1、HEK293)に遺伝子導入し、実際にサイトカインなどの生理活 性物質を発現させ、定量に挑戦する予定である。また、質量分析による定量法として確立できたならば、 アミノ酸以外の化合物による標識も提案する。

今後の課題

■ 論文・学会発表
なし

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