早稲田大学大学院 理工学研究科 生命理工学専攻

研究成果

P2BL0717
ブレイン・マシン・インタフェースの開発

研究グループ

  研究室 氏名 プロジェクトにおける役割
L 石山研究室 佐々木 貴志 脳波計測と信号解析手法
CL 松本研究室 八木 佑太圭 学習アルゴリズム
CL 藤江研究室 渡邉 正樹 マシン設計・製作
4 藤江研究室 関 雅俊 マシン設計・製作
5 石山研究室 飯島 良一 脳波計測と信号解析手法
6 石山研究室 岡田 真由子 脳波計測
7 石山研究室 舘野 裕介 脳波計測

共同研究プロジェクトの目的(共同研究によって達成しようとしたこと)

近年脳科学の発展は目覚しく,脳・神経を構成する細胞組織の活動からヒトの精神機能までさまざまな現象の解明が進んでいる.それらを基に現在、「ブレイン・マシン・インタフェース」(Brain-Machine-Interface:BMI)と呼ばれる技術が確立しつつある.これは,ヒトの思考に伴う脳内の電気的活動を外部から捉え,その信号を解読(デコーディング)し,抽出された意図を機械の動作に反映・表現する技術である.脳が身体を介さずに外界へ直接働きかけることができ,「言語や動作によらない脳と外界との情報交換」として注目を集めている.

BMI研究は,電極を埋め込み脳内電位を直接計測する侵襲方式と,脳波計測などを基にする非侵襲方式に分類できる.現在は主にサルを対象に双方から研究が進められており,ヒトを対象とした侵襲方式のBMIも実現しつつあるが,ヒトの非侵襲方式におけるBMIはまだ開発段階である.人間との親和性を鑑み,本プロジェクトでは非侵襲BMIの実現を目標とする.

また,脳活動の補足にMEGやfMRIなど大掛かりな計測機器が必要となれば,BMIの利便性が著しく損なわれる.将来幅広い応用を見込むためには機器の可搬性が重要である.本プロジェクトでは脳波(EEG)の可搬で小型の計測機器を用いた上で高精度なインターフェースを目指す.

本プロジェクトは非侵襲で可搬性の高い脳波計測機器を用いて,脳と機械をつなぎ相互を作用させるシステムであるBMIの開発を最終目標におき,3研究室が融合して研究を行う.

BMIの実現においては,脳活動の補足(脳波・筋電計測),解読(信号解析と情報アルゴリズム),表現(代替マシン)という3段階での工学的技術・手法が必要となる.そこで,以下の様に各研究室がそれぞれの得意分野を担当しながら,3研究室の融合・協同によってBMI開発ユニットを結成する.

電気・情報生命 : 石山研:抽出と解読の信号解析  ← 脳波計測及び信号解析手法
電気・情報生命 : 松本研:解読の情報アルゴリズム ← 学習アルゴリズム
生命理工    : 藤江研:表現と脳波解読の補償  ← 代替となるマシン設計および筋電計測手法

非侵襲のBMIにおいて脳波には曖昧さなどの問題がある.それを筋電による解像度の向上や学習アルゴリズムによって解決し,迷路走破のタスクを実現する.

具体的に以下の項目を達成目標とする.

@ 各研究室が持つ工学的手法・技術を持ち寄り,脳波・筋電の信号解析,脳波の特徴が顕著であると言われている眼の開眼・閉眼動作によるα波の抽出とBMIを反映するマシンの製作を行い,タスクの実現を目指す.
A 現在のBMIに関する研究を行っている国内の研究機関への訪問により,先行研究を見学し,他の研究者の話を伺い,今後の具体的な研究テーマの決定の判断材料とする.
B 眼の開眼・閉眼によるBMIの確立と訪問による知見から操作意思による脳波の特徴量を抽出し,人間が意図した通りのマシン操作を行えるようにする.

プロジェクト研究の経過と成果(共同研究によって達成されたこと)

@)α波による瞼の開閉判別

瞼を閉じると,脳波にα波と呼ばれる周波数8〜13[Hz],振幅50[μV]程度の波が大きく発生することが知られている.BMIの第一歩として,脳波に含まれるα波の増減から開眼・閉眼を識別し,それを機械への操作意思として抽出する.

○実験条件
被験者 健常な男性9名女性1名
(平均年齢21.75歳)右利き

被験者 健常な男性9名女性1名
(平均年齢21.75歳)右利き
電極貼り付け部位 10‐20法に基づく部位の
PG1,PG2,FP1,FP2,O1,O2
アースを額,基準電極は両耳朶
サンプリング周波数 200Hz
サンプリング個数 50
アナログフィルタ 0.16Hzハイパス 60Hzローパス
データの取り込み時間 -3000〜3000ms

○実験手法
被験者には音を合図に瞼の開閉を繰り返してもらう.次の音が聞こえるまで,瞼が開いている状態(または閉じている状態)を持続するように指示する.この際,被験者の頭部所定の位置に貼り付けた電極電位の時間変化を,A/D変換ボードを介してPCに取り込み脳波計測を行う.
開眼時の無意識的な瞬きと意識的な閉眼状態の識別は,PG1・PG2に取り付けた電極の信号(眼電)用いて行うことができる.

○解析・結果
得られた測定データをデジタルBPFに掛けノイズを除去した後,FFTを用いて周波数スペクトルを求めた.ここで開眼・閉眼時の典型的な周波数スペクトルを下図に示す.8から13Hzの成分をもつα波の増減を確認できる.

achivement

A)マシンの製作

BMIによって操作される移動ロボットを製作した.後輪に左右別々のモータを配置することによって前進・後退・その場での左右旋回が可能となっている.無線通信によるコントロールシステムを実装し,被験者はマシンに表現された結果を視覚などからフィードバックできる.

B)BMIの実装

α波の増減を逐次抽出することによって,開眼時に移動ロボットを前進させ,閉眼時には停止させるという操作をBMIよって実際に行うことができた.

研究成果のビジュアル概要

visual

今後の課題

  1. 調査活動
    まだまだ発展途上名研究分野であるため,さらなる情報収集を行いたい.そこで現在のBMIに関する研究を行っている外部の研究機関への訪問・見学し,他の研究者の話を伺う.具体的にはBMI開発が推進されているATR(国際電気通信基礎技術研究所)の脳情報研究所に3月に訪問することになっている.
  2. 特徴量抽出による操作意思判別手法の確立

移動ロボットを操作するための手動コントローラを準備し,コントローラ操作に対応する脳波の特徴量を抽出する.その後コントローラと移動ロボットの接続を切り,今度は抽出した特長量に基づいて移動ロボットが駆動するように設定する.これを繰り返し,機械側の学習と人間側の訓練を重ねることによってコントローラ操作を行わずともイメージだけで脳波に特徴量が現れ,移動ロボットの操作が可能になる見込みである.その際,以下のことが課題点として挙げられる.

  1. 脳波測定のチャンネル数拡大
    脳波の特徴量抽出によって移動ロボットの発進・停止操作が行えることが確認できたため,今後より細やかなマシン操作を行えるBMIシステムを構築していく.多種類の操作意思を判別できるようになるためには,脳波の周波数解析だけでなく,計測位置による脳波測定のチャンネル数拡大が必至であり,より煩雑になる情報から特徴量を抽出するアルゴリズムの構築が課題である.
  2. 学習アルゴリズムによる判別精度向上
    脳波などの生体情報は実験条件に影響されやすく,計測ごとにデータのむらが生じる.画一的な判断指標ではそれらに対応できないため,学習アルゴリズムを用いて操作意思の判別精度を向上する.
  3. フィードバック学習の検証
    より多機能で正確なBMIの構築には操作者の訓練によるアプローチも欠かせない.どのような情報を操作者にフィードバックすることで訓練効果を高められるかも検討していかなくてはならない.
problem

論文・学会発表

国内学会

[1] “脳内信号源推定における遺伝的アルゴリズムパラメータの最適化”, 佐々木貴志,嶋田裕介,安斉和久,及川敬敏,葛西祐介,斎藤優,石山敦士,渡邊裕, 葛西直, , 第22回日本生体磁気学会誌, 2007, 274-275

[2] “着地姿勢に基づく脚伸縮ロボットの歩容生成”, 関雅俊,中澤和夫,藤江正克, 第25回日本ロボット学会学術講演会, 2007,1G17

卒業論文

[1] “聴性誘発MEGにおける周波数依存性の検討”, 佐々木貴志,安斉和久, 早稲田大学理工部電気・情報生命工学科

[2] “振戦抑制を目的とした手首・肘外骨格型ロボットの開発〜EMGを用いた振戦する腕における随意運動抽出〜”, 渡邉正樹, 早稲田大学理工学部機械工学科

[3] “脚伸縮ロボットの着地姿勢に基づく歩容生成”, 関雅俊,慶応義塾大学理工学部システムデザイン工学科

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